アイシールド21 その2

さて、前回話した「アイシールド21」の面白いと思う点ですが、まず一つ。

・基礎練習の大事さを言及している

ことだなと思います。


スポーツ漫画の多くはこの事をあまり描かないですよね。
もちろん練習風景や猛特訓の様子は描くのですが、基本最後は「才能」として勝っちゃう感じが否めません。


まあ、普通はそうじゃないとなかなか面白くないのは確か。
あだち充漫画も、「H2」や「ラフ」とかは元から主人公強いし。だからこそ、面白い。
でも「才能」は努力あってのものです。


「タッチ」の上杉達也は、最初から凄いピッチャーだったわけではないじゃないですか。

最初は何をやってもダメだった達也が、練習と挫折を繰り返して、ライバルに勝っていく中で、主人公が「段々強くなっていく感」が楽しかったわけです。
ただ、ストーリーを見ているほうは「強くなった事」ばかりに目がいきすぎて、肝心の「強くなった過程」を忘れがちになるとおもうんです。


いわばワンピース的なやつですね。あの作品は、「いつの間にサンジそんなに強くなった!!?」的な理由の無いパワーインフラで成り立っています。
でも、努力して特訓して彼らが強くなったわけじゃなくても、充分ワンピースは面白いです。

それは、「強い」という事それ自体に、我々がカタルシスを得るからです。
毎回、とあるキャラの過去の因縁を、ルフィー海賊団が無類の強さでぶちのめすところが、感動するからです。だからワンピースはそれで充分面白い。


でも、アイシールド21の感動の見せ場はそうではない。「基礎練習や努力の積み重ね」で強くなっていった登場人物が、その力で様々な因縁を打ち破る、という描写こそが見せ場。

セナの「超高速ラン」やモン太の「超人的キャッチ」も、才能といってしまえばそれまでですが、それでも「登場人物のたゆまぬ努力で身に着けた必殺技」だからこそ、見ていてカタルシスがあると思うのです。


これは僕が高校時代、週6日部活動をやっていて青春のほとんどをまさに「練習」にあてていたからこそ、思う所かもしれません。

週6日、土日は朝から晩まで練習。冬は始発で朝練。
監督にどなられるわ、坊主になるわ、胸や顔に剛速球食らうわ・・・。
ここまで頑張っても、関東ベスト8が精一杯でした。

努力だけでは乗り越えられ無かった壁。「経験や才能」。この事実の前に涙を呑んだ経験をした人って世の中にごまんといると思うのです。


「最後は才能や経験がものを言う」というのは、スポーツの世界では真理なのかもしれない。
でも、皆に夢や勇気を与える「漫画」というコンテンツが、それをいってはいけないと思うのです。
エンタメコンテンツとは、どんなにきれいごとでも、胸をはってそれを主張するべきなのです。それが娯楽の醍醐味なのです。


だから、僕はアイシールド21の中でも、以下のシーンが一番好きです。


神龍寺ナーガ戦。タッチダウン目前のヒル魔が、追いすがる宿敵の阿含に言い放つセリフ。


「いくら奇策珍策練ろうがな 結局最後にモノ言うのは基礎トレだ」
「テメーが神龍寺で練習サボってる間───0.1秒縮めんのに一年かかったぜ…!!」


一年間さぼっていた天才を、一年間努力してきた凡才が倒す。
夢があるじゃないですか!感動するじゃないですか!


こういう作品が、こういう事を声を大にしなきゃ、誰もきつい練習しませんよ。
そういうパワーを持っている作品だと思いました。



最新刊まで読みましたが、やはり僕的盛り上がりのクライマックスは、この「神龍寺ナーガ」戦ですね。
いやもうあれはほんと熱かった。詳しい事は説明するの面倒くさいから、とにかく読んでみてくれといいたい!


以上!

あ、あと毎日更新するのは時間リソース的に厳しい事がわかったので、「ほぼ毎週更新」にします。
すみません!